セルフケアの手法として世間を賑わせた水素水。テレビやネットを始め、身近な店頭でも頻繁に目にする機会があったため、記憶に新しい方も多いはずです。しかしある時を境にこの盛り上がりは終わりを迎えます。本記事では、なぜあれほどの社会現象が急激に沈静化したのか。その経緯と現在の立ち位置について、これまでの歴史を振り返りながら科学的根拠を交えて解説します。
そもそも「水素水」とはなにか?
水素水とは、その名の通り「水素分子(H2)」が溶け込んでいる飲料水の総称です。水素は本来、水に極めて溶けにくい性質を持っているため、工場で高い圧力をかけて強制的にガスを溶かしこむ製造方法が主流となっています。
| また、家庭用の生成装置では、水の電気分解による製造方法が用いられており、実際に私が愛用しているものはこの仕組みで水素水が作られています。 |
2007年に発表された論文から、水素が体の中に溜まった「活性酸素」を取り除き、免疫機能のコンディションを整えるサポーターのような役割を持つことがわかっています。
| 日頃の水分補給を水素水に置き換えるだけで、無理なくその恩恵を受け続けることが、最大の魅力と言えるでしょう。 |
水素水ブームが始まったきっかけを振り返る
水素水が社会現象と言えるほど大きなトレンドになったのは、次の3つの要因が重なり合っているからです。
- セルフケアや美意識の向上により「内側から整える」と注目を浴びた
- 影響力を持つ芸能人やインフルエンサーが、メディアを通して日常的な飲用をアピールした
- 市場が拡大すると見込んだ企業が、相次いで開発・販売に乗り出した
それぞれの要因がどのようにブームを加速させたのか、詳しく見ていきましょう。
「活性酸素」への注目で健康と美容への意識が高まる
【簡単に解説】活性酸素とは何か?
活性酸素は私たちの生命活動を支える役割がある一方、増えすぎてしまうと自分自身の細胞や組織を傷つけてしまいかねない物質です。そうして負ってしまったダメージが、肌トラブルや老化現象、さらには糖尿病やがんなどの重大な疾患を引き起こす引き金となります。
| 特に酸化力が強く、悪玉とされるヒドロキシラジカル(フリーラジカル)が原因であると、1950年代に提唱されてから現在にいたるまでの研究により解明されました。 |
<活性酸素の特徴>
| 体へのメリット |
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| 体へのデメリット |
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| 引き起こす可能性がある疾患 |
等 |
水素水と活性酸素の関係性について整理する
活性酸素は、 私たちが呼吸し、細胞がエネルギーを生産・消費する度に絶えず発生しており、体内での生成を止めることはできません。そこで、水素水の出番です。日常的に摂取し続け、この悪玉を溜め込まずこまめに掃除することで、体のバランスを保ちます。
| 水素の優れた点は、ヒドロキシラジカル(HO)と反応した後に「ただの水」へと変化し、体への負担なく排出される点にあります。化学式:H2 + 2( HO) → 2H2O |
水分補給という日常動作を通じて水素を補うことは、非常に効率の良い健康習慣と言えます。
芸能人やインフルエンサーが広告塔に【強い拡散力】
多くの著名人が「美容のための習慣」として水素水を紹介したことが、さらなる盛り上がりを見せる起爆剤となりました。憧れの人、美意識の高い人が愛飲している姿が、「私も真似して取り入れたい」という気持ちを強く刺激しました。
| 当時、私は中学生でしたが、親戚が話題にしたり、テレビの特番で放送されていたことを今でも覚えています。 |
一方で、一部のメディアが「魔法の水」「○○に効く」といった過剰な表現を用いて紹介したことが、後に信頼を失墜させ、世間に強い不信感を植え付ける要因となってしまいました。
多くの事業者が開発と販売を始めたから
市場の可能性を感じ取った企業が続々と参入したことで、水素水はコンビニやドラッグストアなど、どこでも手に入る身近な存在になりました。
さらに、飲料水にとどまらずサプリメントや化粧品、入浴剤といった関連アイテムも次々に登場し、日常に「水素」がどんどん浸透していきました。
【2つの理由】どうして水素水ブームがなくなったのか?
加熱したトレンドが終わりを告げた最大の理由は、公的機関による調査結果の公表、不適切な宣伝の仕方に対して行った法的措置にあります。
理由1:水素の特徴を甘く見すぎた。国民生活センターが発表した驚きの内容
2016年、国民生活センターが行った調査が衝撃を与えました。市販の水素水を検査したところ、「ラベルの表記より少ない」あるいは「水素が全く検出されなかった」という製品が散見されたのです。
| 水素(H2)の分子は宇宙で一番小さく、あらゆる物体の間を容易に通り抜けてしまいます。この調査の結果、アルミパウチ等では水素の減少を比較的抑えられていましたが、ペットボトルの商品は、消費者の手に渡る頃には「ただの水になってしまう」という実態が露呈したのです。 |
また、販売業者へのアンケートで「飲むことによるメリット」を問うた際、15社中11社が「水分補給」という返答でした。こうした品質管理の不備や事業者の自信の無さが「ただの水を高い値段で買わされた」という認識を持たせてしまい、熱を帯びていたブームが一気に冷え込むこととなりました 。
理由2:水素水は効果なし!?消費者庁が水素事業関連事業者へ法的措置
過度な効果を謳う広告や宣伝が横行したため法的措置へ
一部の事業者による、医薬品として認められていないにも関わらず「シミが消える」「病気や風邪が治る」といった景品表示法に抵触する誇大広告を行ったことが問題視されました。これに対し、消費者庁は行政指導や法的措置という厳しい判断を下しました。
| 特に深刻だったのは、自社製品を用いた「根拠のある臨床データ」の提示を求められた際に、問題視された企業4社とも確固たるデータを提出できなかったことにあります。 |
いくつもの事業者が自社製品での検証を怠り、他者を引用してあたかも「自社製品にも同様の効果がある」と宣伝していた実態が明るみになったことで、不信感をより強く抱かせてしまうことになりました。
本当なのか?「水素水は効果なし」という認識の真実
この認識は誤っています。消費者庁による発表は「水素水に効果はありません」と断定したわけではありません。指摘の本質は、あくまで「商品を特定の事象に効果があるといって販売していた手法」に対してです。
| ゆえに「水素には効果がない」と言ったわけではなく、商品を「適切な証明がないまま、薬のように見せて売るな」と警告したのです。 |
しかし、この報道の断片が一人歩きしたことで「水素水自体が嘘だった」という解釈が広まり、多くの消費者が裏切られたと感じたことが、市場が急速に縮小する引き金となりました。
「水素水に効果はない」と言われた理由はどうしてか?
水素水に対して疑問視するような声が上がった最大の理由として、行政による不適切な宣伝への指摘を、「水素の科学的根拠そのものが否定された」と世間が誤解して受け止めたことにあります。さらに、以下の2つの要素が認識を定着させる要因となりました。
- 実際に飲んでみても、期待したほどの体感を得られなかった
- 研究データ(エビデンス)が社会に十分に浸透していなかった
これらの要因についてそれぞれ詳しく解説していきます。
どうして「水素水の効果を実感できない」人が続出したのか?
水素が抜けてしまうという物理的な問題
水素は分子が非常に小さいため、適切な保存方法でないと容易に容器から抜けて行ってしまいます。国民生活センターの調査が示すように、たとえ高性能なアルミ容器を使用していても、開封してから時間が経ってしまうと水素濃度は激減します。
| その結果、多くの消費者が意図せず「水素がほとんど残っていないただの水」を摂取していた可能性が高く、変化を感じられないという意見が出ることに繋がったのです。 |
効果が即効性のあるものだと期待されてしまったから
行き過ぎた広告表現により、「一口飲めば劇的に体調が良くなる」といった過度な期待を抱いた層が多かったことも原因です。臨床研究や動物実験の多くは、数週間から数ヶ月という単位で継続的にデータを収集しています。
年齢や体内の酸化ストレスの状態によって必要な摂取量は異なるため、個人差を無視して即座に結果を求めるのは本来のあり方とは言えません。
水素水の効果に関する科学的根拠(エビデンス)
これまで実施された水素水に関する研究の中から、主要なものを抜粋して紹介します。
| 研究カテゴリー |
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| 2型糖尿病・糖耐性異常 |
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| パーキンソン病 |
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| 神経疾患 | それぞれの疾患に対して解説。
神経変性疾患の発症および急性神経疾患の悪化を防ぐのに効果的と示された。また、水素水の摂取は深刻な副作用の報告はなく、継続して取り入れることが可能であると結論付けられた |
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| オーバートレーニング |
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| スポーツパフォーマンス |
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| 放射線治療(がん治療) |
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| 炎症・抗酸化作用 |
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| 高尿酸血症試験 |
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上記のように、水素の有用性は多くの学術論文によって示唆されています 。日常の水分補給を通じて効率的に水素を取り込むことは、無理なく継続することができ、抗酸化や免疫維持において大いに期待できる習慣です。
【2025年】水素水に関する現状について
現在の水素業界は、一気に健全化が進んでいます。その中止的な役割を担っているのが、2018年3月に発足した「一般財団法人 日本分子状水素普及促進協会(JHyPA)」です。日本医科大学名誉教授の太田茂男氏を筆頭に、正しいリテラシーの普及と品質管理の徹底が推進されており、厳格な認証制度も運用されています。
現在販売されている水素水に対する信頼性
ブームに乗じただけの不誠実な事業者は淘汰され、現在はJHyPAの認証制度をクリアした、信頼性の高い製品が市場に残っています。ただし、未だ認証を受けていない製品も存在するため、購入時には以下のポイントをチェックしてください。
| 注意すべき表現・状態 | 信頼できる表記の例 | |||
| 濃度の記載の仕方 |
のみの記載 |
の両方の記載 |
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| 容器の種類 | 通常のペットボトル(水素は通り抜けてしまう) | アルミパウチ、アルミボトル、または特殊加工容器 | ||
| 効果の宣伝の仕方 | 「がんが治る」「アンチエイジング」などの表現 | 「毎日の健康維持のサポートに」「コンディションを整えたい方へ」といった表現 |
現在でも一部のネット通販において、過度な効果・効能を謳った製品が見受けられます。必ず事実に基づいたものを購入しましょう。もし心配であれば、手に取る前に一度、上記の表を見てから購入を検討してください。
医療やスポーツの現場で注目されている「水素ガス吸入」との違い
水素水との最大の違いは、研究が進んでおり医療現場で導入された実績があるということです。2016年、水素ガス吸入療法が先進医療Bに認定されました。水素ガスを直接吸い込むことで、高濃度でかつ効率的に水素を体内に取り入れることができます。
| 先進医療Bでは「心停止後症候群」が対象となっており、現在では臨床数が減少し先進医療Bから取り下げられたものの、様々な疾患に対して自由診療という枠組みで治療を受けることが可能です。 |
また、スポーツ界でも筋肉痛の緩和や早期の疲労回復、パフォーマンスの向上を目的として活用が進んでいます。水素水も同様の期待が持てますが、吸入に比べると取り込める量は限られるため、今後の研究の進展が注目されています。
水素水を飲むときの注意点
水素水を生活に取り入れる際は、その特性を理解した上での付き合い方が求められます。また、以下に当てはまる方は専門家への確認を推奨します。
| 飲む際の注意点 | 一度相談した方が良い方 |
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意図していないところで副作用が起きる可能性は否定できません
万が一を考慮し、持病を持っている方は医師に相談しましょう |
【水素水経験者が語る】水素水を飲んで感じたこと、変わったこと
季節の変わり目でも「体調管理」が楽になった
日常に水素を取り入れてから、日頃の体調管理がうんと楽になりました。私は、1シーズンで2回同じ型のインフルエンザにかかった程、体は強くなく季節の変わり目は本当に体調管理が大変でした。
| しかし、水素水を取り入れて2ヵ月経ったころ、あんなにも気を付けていた体調管理に意識を持っていかれていないと気が付きました。私が季節の変わり目に体調を崩すのは「毎シーズンの恒例行事」と言われるほどだったのにもかかわらず、今では気にせず過ごすことができています。 |
冬場の「乾燥」が気にならなくなった
私は冬場になると乾燥が原因で肌荒れを起こしやすい肌質でしたが、現在はぱっくり割れが少なくなっていると感じます。
| 手洗い、うがいで少しでも水分の拭き残しがあると、すぐに乾燥してぱっくり割れを起こしていました。特に子供のころの冬場のぞうきんがけは本当に苦痛でした。ぞうきんを絞るたびにひび割れし本当に大変な思いをしました。 |
しかし、水素を取り入れたその年の冬は皿洗いや洗濯をして手に水が付いている状態が続いても、昔みたいに頻繁にひび割れを起こさなくなったように感じます。
それでも「水素水単体」では実感しにくい
水素水では体に吸収されるまでに抜けてしまうことも多く、水素ガス吸入に比べると水素を摂取できる量に圧倒的な差があります。ですので水素水を飲んだからと言って大きな変化を感じられるという保証はありません。
| 私が上記のように感じることができたのは、たまたまなのかもしれません。しかし、飲み始めて4ヶ月後から「水素ガス吸入も取り入れた」ところ、現在に至るまで、より体調管理が楽になったり、疲れを感じにくくなったりと水素による効果を実感しております。 |
ですので、水素にはそのような効果はありますが、水素水が万能というわけではないということには注意してください。飲用するのであれば「ゆっくりと体の内側からキレイにしていく」というイメージで日常に水素水を取り入れるとよいです。
» がん治療に水素吸入療法【予後不良と診断された希少患者の体験談】
水素水ブームがなくなったのは販売者側の信頼の失墜【まとめ】
水素水ブームがなくなったのは、販売者側の過度な効果を謳う宣伝内容や、消費者の手元に届いた水素水の濃度が、記載されているものと違うということから信頼を失ったからです。
ですが、これらは水素水に、ましてや水素に活性酸素を取り除きシミ、シワ予防やその他の疾患に対する効果がないと言ったわけではありません。現在も水素による研究は進められており、水素水に関する研究もヒトを対象にしたものが行われ続けています。
今後さらに開発が進めば、高濃度の水素水の生成、水素水を今以上に効率よく取り入れることが可能となり、水素ガス吸入と同様に医療として認められる未来がくるでしょう。
著者:蔵本 将吉
| 2022年、実弟が希少がんを発症。標準治療の効果がかんばしくないと言われた中、水素ガス吸入療法と出会い水素に関心を持ち始める。水素の力の可能性を知り、将来の健康のため日々の生活に水素を取り入れている。水素は将来の自分や家族の健康への投資だと考える。 |
<参考文献>
・容器入り及び生成器で作る、飲む「水素水」-「水素水」には公的な定義等はなく、溶存水素濃度は様々です【国民生活センター】
・水素水生成器の販売・レンタルサービスの提供事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について【消費者庁】
・Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals








